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うさぎの詩

Posted by シェリーいすちゃん on 23.2012 0 comments 0 trackback


     ぴん ぴん ぴん

     ウサギ屋のあつかう集音器は高性能でやんす

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     草村に出かけて知り合いから二つほど仕入れてまいりやしょう


( そんな注文した覚えもないのに…

フシギ横丁の楽器店。

水いろメガネに、まっ赤なスニーカー。ソウルなしゃがれ声。

店主の黒うさぎはそう言うと、

くるくる眼で、裏口からトランポリンみたいに跳ねていった。


とぶとぶ葉波にとばされて

ぽんぽんシッポもみどりにゆれゆれる

さらに さらさら流れゆく

草村とおく道をさがしゆく

感性のふかき器をもとめゆく


     *


いたってへいわな、いつもとかわらぬ、

かわいた、しゅうまつ。

いつものように、いくつかの、いくたびかの、

しめった、しのけんきゅうかい。


嵐の夜のように、心のなかは渦巻いていた。

外に向け、批判のための批判をくりかえす人々。

内に向け、馴れ合い。非建設的な...

群れ意識、の負。

どんよりと黄ばんだ吐き気がし、外の空気を吸いに表へでた。

  Nobody cares.

気分はもどったが、中にはもどらなかった。


ざーっと 雨足60度

ビニールな透明さがかすむ

あらいながされたい

ざーっと 雨音360度

紫陽花のうたも今はきこえない

コンクリートの群れ


15分、雨のなかをユラユラと通りをあてもなく歩いた。

( 見覚えのある、あれは…


さんかく屋根。よーろっぱ風の駅舎に、折りたたまれてゆく。

くろ、あお、おれんじ、れもん、きみどり、

しきさいのアンブレラ。

駅前のロータリーには、雨粒におじぎする花時計。

ぴんく、あか、きいろ、むらさき、しろ、

いろどりのパンジー。


ひとみは かがやく雨のパレット

あわく やわらかく いろを作って

ガラスの馬にのろう

涙のみずたまりを ジャンプ!

わたしの 虹のブリッジ


駅から南にまっすぐのびる、片側2車線の大通り。

樹齢50年をこえるソメイヨシノに、

葉が、あおあおと繁る。

さくら並木をあるき、カウント 1,2,3,4、そして、

5本め。緑のしましま屋根に、赤い文字。

‘ぐりむくりいむ’

ちいさな、おしゃれな、老舗カフェ。

持ち込みOK。

人気のカフェラテ、1杯380円。


メルヘンチックなお味はいかが

ぐりむくりいむ

ガラスの靴さがしてる貴女には

とくべつ仕立てのパンプキンパイ

12時までならサービス価格


メルヘンチックなお味はいかが

ぐりむくりいむ

白雪の美しさにキスしたい貴方なら

ウインナコーヒーをお出ししましょう

こびとのクッキー7つを添えて


メルヘンチックなお味はいかが

ぐりむくりいむ

フシギの国でまいごの貴女には

キャロットケーキがおすめめです

ものしりウサギがお相手します


「ちゃいろい弁当だろ?」

そういいながら勝手にべんとうばこの蓋をあける奴がいる。

のこりものの煮ものの、卵とじ。

「卵に抱かれる、ちゃいろ。あながち、間違いではないな。」

そういうと、カフェラテにくちをつけはじめる。

( あ、ひとの飲みものを勝手に…


ベレー帽の白うさぎ、となりの席でコーヒーをすする。

( おい、嘘だろ…

おどろいて店内を見回すと、

いつのまにか人間ではない色合いでひしめいている。


、、、からし(ポロシャツの狐)、、、きん(タンクトップの鶴)

みずたま(サマードレスの羊)、、、くろ(ランニングシャツの鯛)、、、

、、、あいいろ(浴衣のペンギン)、、、しろ(ワイシャツの狸)

もすぐりいん(Tシャツの犬)、、、すみれ(ブラウスの猫)、、、


「コーヒー、美味であった。ま、そんな顔をするな。

 ふむ、ふむ、、、ふむ、、

 わしが診たところ、君は心の聴覚を病んでおるようだな。

 どんよりとした黄ばんだ嘔吐感、それが特徴でな。

 せまい了見の奴らとばかりといると心が堅くなり陥る症状だ。」


( どんよりと黄ばんだ吐き気…


「ごちそうしてくれたお礼に、フシギ横丁を案内しよう。

 従兄弟のやっている楽器店があるんだが、彼にこのベレー帽を渡しなさい。

 君に必要なものを手に入れてくれるはずだ。」


( 楽器店で、ひつようなものなんて別に…


テーブルのうえ赤い水キャンドルのともしびに町があります

たのしそうにゆきかうたくさんの足音が石畳にひびきます

街灯に吊りさげられた鉢からは蝶々のような愛らしい花があふれています


トロピカンフルーツのあまい匂い

水着をきたおすましマネキン

軒下のバスケットには百均の食器

棚作り名人の薬屋

コロッケをあげるジュージューという音

写真スタジオにかざられた家族写真

楽器店に出入りする黒い革ジャンたち


「おお、フシギ横丁の『ウサギ屋』。そこが従兄弟のやっている楽器店だ。

 ベレー帽は従兄弟からの借りものでな。くれぐれもヨロシク伝えてくれ。」


頬をふくらまし、

口をすぼめ、

髭をぴくつかせ、

ふっ!


白うさぎが、

キャンドルの火を吹き消し。

停電のような…


いきなり投げ込まれた。

つゆの晴れまの陽ざし、

きらきらレンズ。

みあげる、視線のさき...。


『ウサギ屋』

オーク材の看板は古びて、

老舗の風格。


ハッとして、白うさぎの姿をさがす。

ベレー帽だけが…。


     *


     ぴん ぴん ぴん

     ウサギ屋のあつかう集音器は高性能でやんす

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     草村に出かけて知り合いから二つほど仕入れてまいりやしょう


京の町家のような、うなぎの寝床。

楽器店は間口はせまいが、うねうねと。

とちゅうの中庭。

空がみずいろを描き、アジサイがきらめく。


うなぎウキウキぶぎうぎバンド

うなぎのねどこステージにON

うなぎパイよるのおかし&くろビール


寝床のいちばん奥は、ステージらしき造り。

まいしゅう月曜には、ぶぎうぎバンド演奏も。

いつか聴いてみたい気がした。

( うなぎが演奏してたりして、アハハ、まさかね…

壁のポスターには、革ジャン姿のうなぎたち。

Why not?


入り口ちかくのカウンター。

オークの天板は、

飴色を自慢している。

( そうだとも、気合なんだ…

指でちいさな傷跡をなぞり、

ほおづえ。

本職のかわりにならない、

ぶっちょうづらの店番。

( やっぱり、なりゆきか…

定型詩の生活に、とつぜんの自由律。


さいしょのお客は、ギターかかえた森村のしまりす。

「絃がすぐ切れちゃって、ざまあないさね。」


   きみが怒りにふくみける もろはの剣の刃こぼれ

   真紅のリストを切らずに ぎりぎり刻む


つぎのお客は、太鼓をかかえた海村のイソギンチャク。

「この太鼓もってるだけで、大海にでれんやろか。」


   よわそうでつよい 太鼓の面の皮

   つよそうでよわい 困ったときの太鼓頼み


( おもったより繁盛だな…


檸檬いろ淡き紅茶のポットに

赤く艶々はちきれ潤む

サクランボを銀皿にそえ

われは辛酸なめきし舌のうえにて

ももいろうすき午睡をまどろむ


用意されていたポットとカップ2客を冬から夏へとうつし、

アールグレイの茶葉をいれ、熱湯を注ぐ。

ごていねいに、砂時計まで。

( う~ん、この芳香…

店主の黒うさぎからの、心づくしである。

( しかし、なぜにカップは2客なのか…


「君、5分の遅刻だ。」

目のまえには、ダンディーな三毛猫の紳士。

銀製のふるめかしい懐中時計の針は、3時5分。

「黒うさぎが不在なら、かわりに君が相手をしたまえ。」

目のまえには、ケイタイ用の碁盤と碁石箱。

フェンシングの選手が剣道の竹刀をかまえているような...。

「我輩はチェス、ときめてかかる理由はなにかね。

 ステレオタイプというものだよ、それは、君。

 伝統には、おもんじられるべき時間の醸造がある。

 それは決してステレオタイプの踏襲では育まれえないし、

 君のような狭量な考え方では、ビートルズやハリーポッター

 といった未来のたまごは産み落とされない。

 そんなだから、黒うさぎは君のために草村まででかけたのだよ。」


感性のふかき器をもとめゆく

草村ひそかに隠しもつ

感性のふかき器はいづこにありや


     ぴん ぴん ぴん

     ウサギ屋のあつかう集音器は高性能でやんす

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     草村に出かけて知り合いから二つほど仕入れてまいりやしょう


水いろメガネに、まっ赤なスニーカー。ソウルなしゃがれ声。

トランポリンみたいに跳ねていく黒うさぎの、うしろ姿が目にうかんだ。

( 音が...? いや、気のせいか…


お茶の時間が過ぎると、また客波がよせはじめた。

毛色の変わった、お客たち。

入り口のかわいい銀の鈴が、ちりり~と美しいソプラノをふるわす。


銀の鈴のソプラノはひとりだけれど

その歌の連れのにぎやかさ

さくらの木は花すぎてのち葉をしげらせ

わさわさと元気がいい

商いの留守番に身をほうりこみたる我の楽しさ


つぎのお客は、ネジをせおった空村の鴨。

「ネジのぬけたピアノの弾き手求む!の‘闇なべジャズ・バー’は此処かしらん?」


   鴨がネギしょって 鴨なべへ

   鴨がネジしょって 闇なべへ


つぎのお客は、オペラのポスターをかかえた田んぼ村の鷺。

「お店に貼らせてもらえませんか?『まことしやかな鏡』っていうオペラです。」


   まことの我はいづこにありや

   鏡のなかをたづねゆく


( 日が暮れたな…

店のシャッターを閉め、店内のそうじをはじめた。

埃をかぶっている箇所はどこにもなく、

店主の黒うさぎの几帳面さがうかがえた。

言われたとおり、

( 言われたとおりにする、理由…

合鍵をつかって表と裏の戸締りをガチャガチャとした。


フシギ横丁をぬけた途端、霧の通り――――

うすオレンジいろ街灯のもと。

ゆれる人影。

ゆ~らゆ~らゆ~ら。

さまざまな音が、波間をただよう。


     ぴん ぴん ぴん

     ウサギ屋のあつかう集音器は高性能でやんす

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     草村に出かけて知り合いから二つほど仕入れてまいりやしょう


ぼかし絵のような通りのベンチに身をあずけ

我が胸のうちに響くは未だ聴かざる熱き音なり


なにゆえに園生の訪ね人のわれに厳しく

あまやかなる花の蕾を砕かんとするぞ。

ま近き花崗の山に緑の輝きて

人の卑しきこころを見下すか

われを痛めんとする鉈は園生をねり歩き

もがきの悲鳴は胸をひきちぎる


疎みしものからの呪縛をたちきれ!

広き大地に途惑いもなく根をはれ!


霧は晴れ、星は降る。

われは心にふかく磨きし音色をもち

紫陽花のころ

蒼穹に「未来」のしらべを奏でたり


( どこへ消えたのだろう…

つぎの日、楽器店に出かけたが、フシギ横丁ごと忽然ときえていた。

何の変哲もない、野原がひろがるばかりで。


     ぴん ぴん ぴん

     ウサギ屋のあつかう集音器は高性能でやんす

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     草村に出かけて知り合いから二つほど仕入れてまいりやしょう


シャツの胸ポケットのふくらみは、返すつもりの合鍵。

とりだしてみると、てのひらで輝くオレンジ棒。

生のミニ・キャロット。

キツネのはっぱ、ウサギのにんじん。

( さて、どうしたものか…

ぴょん、ぴょん、いつのまにか。

黒うさぎが水色の目で、てのひらを見あげている。

肢さきの赤毛が、ふさふさで。

( 水いろのメガネ、まっ赤なスニーカー…

そっと、てのひらを近づけると。

ぽり、ぽり、ミニ・キャロットをおいしそうに食む。

食べおわると、ぴょん、ぴょん。

址には、草の匂いと。風の音...


     ぴん ぴん ぴん

     お客さん これでよく感じとれるでやしょう

     ぐりいん・ぐりいん・ぐりいん

     お代は お客さんの「うさぎの詩」でけっこうてやんす






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Author:シェリーいすちゃん
シェリーいすちゃん こと いずちゃん と申します♪
ネット『詩誌AVENUE【アヴェニュー】』の編集をしています。AVENUEでは「感性豊かな社会」を目指し、さまざまなジャンルとのコラボ詩発表・詩人の作品紹介・いろいろな分野でご活躍中の方の雑記掲載をしています。
ウサギのお茶会♪ では感想詩で皆さんの作品紹介をしてゆきますので、よろしくヨロシクです^^

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